英語力を伸ばすには大量インプットを避けて通ることはできないと、第二言語習得研究で判明しています。
アウトプット力を伸ばしたい場合でさえ、そのアウトプットはインプットに支えられて伸びるものです。スピーキングやライティングが得意なひとは、かならずどこかのタイミングで莫大な量のインプットをしています。
ではどうやって大量インプットを達成するか。その方法として思い浮かぶのは、たとえば⋯
・留学で英語圏に住む
・洋書や英字新聞で英文を大量に読む
・映画やドラマを繰り返し見る
・英語のラジオを聞く
あたりになるかと思います。
しかし現代ではここにもう一つ追加できる手段があります。それが「ゲームをプレイして英語学習する」というもの。
今はゲームの主戦場が海外ですから、英語音声および英語字幕をもった名作は多いんですよね。輸入盤とか購入する必要はなし。今のソフトはゲーム内の言語設定で英語を選べるものがほとんどです。これを上手く利用すれば英語力の向上に役立てることができます。
以下くわしく解説するとともに、英語学習と相性のいいソフトをいくつか紹介します。
英語のインプットにゲームが効果的な理由
英語の大量インプットを実行する手段としてゲームが優れている理由は、以下のものが挙げられます。
・英語が記憶に残りやすい
・リアルな英語表現が学べる
・繰り返しインプットするのが楽
・読書が苦手でもいける
・映画やドラマが苦手でもいける
・勉強モードの外で英語学習できる
・総合的に英語力が伸びる
なぜ記憶に残りやすいのかというと、感情とともに情報をインプットするからです。ゲームはプレイヤーに色々な感情を引き起こしますよね。感情とともにインプットされた情報は記憶に残りやすいことが知られています。
そしてそこでインプットされる英語はリアルな表現ばかりです。ゲームは英語圏の人たちが日常的に楽しむエンタメですからね。
またゲームはリプレイ性が高いので、映画やドラマを何度も見たり小説を何度も読み返したりするより、繰り返すのがずっと楽です。同じシーンと何度も遭遇することによって記憶の定着が深まります。
映像作品が苦手なひとでも、ゲームなら集中力が続きます。能動的な作業ですからね。実は僕がこのタイプです。また読書が苦手なひとでも、ゲームなら問題なく続けることができるでしょう。
そして一番強力なポイントは、勉強モードの外で学習が進むことです。ゲームはほぼ遊びですから、勉強しているという感覚がありません。しかし英語の大量インプットは進行しています。外国語学習ではこのように、机に向かった勉強以外の時間にいかにインプットを忍び込ませるかが成功のカギになります。
こうしてインプットを積み上げると総合的に英語力が伸びます。読書の場合は目からインプットしているだけですが、ゲームを英語字幕でプレイすると、目と耳の両方から英語が入ってくるので。リーディング、リスニング、スピーキングの力が総合的に伸びていきます。
英語力が伸びるのはどんなタイプのゲームか?
英語学習という観点からゲームをプレイする場合、外してはいけないポイントがいくつかあります。
・英語字幕がついている
・テキストの量が多いタイプである
・ムービー演出が多いタイプである
・評価の高い名作で自分にも合っている
まず英語音声がついてなきゃいけないのは当然ですよね。英語字幕についてもそう。どちらかだけでも効果はありますが、やはり両方あるのが望ましいです。
あえて別のスタイルを選ぶなら、最初は「英語音声+日本語字幕」でプレイして、2週目に「英語音声+英語字幕」でプレイするのがおすすめかと。これは今井むつみ『英語独習法』(岩波新書)で解説されていた映画字幕の活用法です。
またテキストとムービーの量が多いタイプのゲームが望ましいです。いくら英語音声と英語字幕でも、フィールドの散策だったりバトルだったりがメインになるような作品では、英語のインプット量を稼げないので。
そして最後に、面白いと感じられる作品であることがなにより重要。いくら評価が高くても、自分がプレイしていて楽しめないのなら効果は薄いでしょう。
では次に、これらの条件に当てはまる名作ソフトを紹介します。
英語学習におすすめのゲームソフト10選
冒頭にも書きましたが輸入盤とかを買う必要はないです。すべてゲーム内から言語設定で英語を選べるので。
デトロイト・ビカムヒューマン
ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント(SIE)から2018年に発売された名作。プレイする映画みたいな感じ。プレイヤーの選択によってストーリーが複雑に分岐していきます。
まさに英語インプットにうってつけの作品。しかもストーリー分岐のおかげで何度もリプレイしても飽きにくいです。
SIEは「プレイする映画」みたいな方向性の名作が多いので、英語学習者はここにお世話になることが増えるでしょう。
ライフ・イズ・ストレンジ
これもデトロイトと同じタイプの作品。フランスのスタジオで開発された名作です。2015年発売。
シリーズ化されているので、1作目にハマれたらその後プレイ候補のソフトが増えます。
ラスト・オブ・アス
現代SIEの代表作。発売されたのはPS3時代ですが、何度もリマスターされPS4でもPS5でも出ています。映画化もされていてそっちも人気です。
ストーリーの良さで大変な好評を得ている作品。ノリはシリアスです。
アンチャーテッド
ラスト・オブ・アスの制作チームによる作品。ラスアスの前はこのシリーズが代表作でした。
ラスアスと違って明るいノリの冒険活劇みたいな感じ。個人的には頭空っぽで楽しめるこういう作品のほうが好き。
スパイダーマン
こちらもSIEのソフト。言わずと知れたスパイダーマンのゲーム化作品です。アクション性が激しいタイプ。映画と合わせて楽しめば相乗効果が発動します。
ゴースト・オブ・ツシマ
これまたSIEの作品。舞台は鎌倉時代の日本。モンゴル軍団を相手に戦うオープンワールドRPG。
ムービーが飛ばせないという短所をもつ作品ですが、英語学習上ではそれが長所に化けます。
グランド・セフト・オート5
アメリカのロックスター社が開発した、世界でもっとも売れているゲーム。販売本数は約2億本という異常な数字です。
なんでもできるオープンワールド。治安は悪いです。現代アメリカ社会の病巣を垣間見るような思い。
ウィッチャー3
ポーランドのスタジオが開発した超大作RPG。2015年発売。
オープンワールドゲーにはめずらしく、ムービー主体のストーリーに力を入れているタイプ。ツシマをよりボリュームアップさせた感じ。世界観とストーリーの作り込みの評価が非常に高いです。
ちなみに原作は小説です。本作にハマったら原作を英語で読んでみるのもよいでしょう。なお映画化もされています。ウィッチャー3の世界にハマれた人は、良質な英語教材がザクザク手に入ります。
ファイナルファンタジー10
これは日本のゲーム。2001年発売。FFはファミコン時代からあるシリーズですが、ここで初めてボイスがつきました。
テキスト量とムービー量が多いシネマティックな作風なのがポイント。そしてストーリーの評価が非常に高い。
現行ハードでプレイできるHDリマスター版には、当時のインターナショナル版が組み込まれています。だから英語音声に自由に切り替え可能。
十三機兵防衛圏
これも日本のゲーム。2019年発売。SF的なストーリーが売り。なんと日本SF界の星雲賞にノミネートされました。ボイスとテキストの量が多いタイプなので、ここで紹介するのにうってつけ。
中学レベルの英文法と高校レベルの英単語は理解しておくのが望ましい
というわけでゲームを活用して英語力を伸ばす方法を解説しました。
最後に注意点があります。
英語力ゼロの状態で英語をインプットしまくっても効果は出ないということ。ごく一部の天才はこれで英語力が覚醒することがありますが、普通は無理です。
中学レベルの英文法と、できれば高校レベルの英単語、これらの基礎はあったほうがいいです。この基礎の上に莫大なインプットが積み重なることで、学習効果は発動します。
これは留学にも同じことが言えますし、映画やドラマの鑑賞にも当てはまります。英語の基礎力がゼロの状態で留学したり、映画を見まくっても、ほぼ確実に効果は出ません。基礎がないので、せっかく大量インプットした英語が積もり重なっていかずに、ボロボロとこぼれ落ちていってしまうんですね。当然ゲームについても同じことがいえます。
したがって中学レベルの英文法と高校レベルの英単語については、地味なお勉強が必要になってくると言わざるをえないんです。
英単語の勉強法はこちらの記事を参照のこと。

英文法の勉強法はこちら。
