英語学習が成功するか否かを左右する要因のひとつとして、正しい学習方法を知っているかどうかという点があります。
でもこれって運に左右されるんですよね。
自分で効果的な勉強法をあみ出せる人なんてそういないですから。英語を教えてくれる先生がたまたま科学的なアプローチに通じていたとか、そういうパターンがほとんどのはず。
いちばん確実で簡単なのは、クオリティの高い英語学習本を読むことです。そうすれば正しい学習方法を知ることができ、その後の努力が効果的に成果を生み出し続けます。
じゃあクオリティの高い英語学習本ってどれなのか?
それをこの記事で紹介します。僕はいままでに英語学習本を50冊は読み、実践で試してきました。そのなかから特に良書だと思うものを紹介しますので、参考にしてみてください。
國弘正雄『英語の話しかた』
同時通訳の神様として知られる國弘正雄のベストセラー『英語の話しかた』をまずはおすすめします。
これは音読の効用を日本に広めた書として有名ですね。読んでいるとやる気が湧いてきます。マンネリ感のあるときに読むと「よーし音読してやろう」みたいな気になれますよ。
音読やスピーキングに偏った内容かというとそうでもなく、文法やリーディングについての教えも書かれています。すべて音読がベースになりますけどね。
また本書の後半は、大量のインプットを活用自在のアウトプットにどうつなげるかが一大テーマになっています。この問題を真正面から取り上げる本は希少。
ちなみに語学の達人その人が書き下ろした名著といえば、ハンガリー人女性のロンブ・カトーによる『わたしの外国語学習法』も有名です。
関連:達人はいかに16ヶ国語を身につけたか『わたしの外国語学習法』【書評】
森沢洋介『英語上達完全マップ』
瞬間英作文という勉強法を聞いたことありませんか?森沢洋介はあれの考案者として有名です。テキストもいろんな種類が書店に並んでいますよね。
『英語上達完全マップ』はその森沢洋介が英語学習のロードマップを徹底的に解説した本です。完全な初心者からTOEIC900点超えの上級者まで、この本に従っておけばまず間違いないという内容。
どうやって英語を勉強していけばいいのかわからず五里霧中という人は、まずこの本を参考にするといいですよ。
瞬間英作文はもちろん、文法やリーディング、リスニングまで全範囲をカバー。体系的に学習のロードマップを描けるようになります。
ちなみにこの人の瞬間英作文シリーズは本当におすすめ。英会話や英作文の力を伸ばしたい人はぜひ取り組んでみてください。
古川昭夫『英語多読法』
多読のやり方を解説した良書です。著者は多読を中心にした英語指導で実績を上げてきた人で、本書もその経験に基づいた内容になっています。
正直ここまで多読一辺倒にする必要はあるのかと感じるのですが、正しい多読のためのヒントをもらおうという気持ちで読むと得るものはめちゃくちゃ多いです。
洋書多読といってもなんでもかんでも読めばいいってわけじゃないんですね。どのぐらいのレベルの洋書を、どのぐらいのペースで読めばいいのか?本書を読むと自信をもって多読を進めていけるようになります。
終盤では洋書の紹介もさらっと行ってくれます。
門田修平『外国語を話せるようになるしくみ』
こちらはシャドーイングを解説した本です。最強の学習法とも呼ばれるシャドーイングですが、最大限の効果を引き出す正しい手順があります。本書を読むとそれが理解できます。
第二言語習得論や脳科学の知見を総動員して書かれており、非常に科学的な読み物となっています。イラストをところどころに挿入して読みやすくしようという工夫が見られるのですが、けっこう歯ごたえはありますね。
音読編も出ていますが、まずはこっちから読むことをおすすめします。意外とシャドーイングのほうがとっつきやすいので。両書を読み比べると、実は音読のほうが手間がかかって大変なんだなと気づきます。
廣森友人『英語学習のメカニズム』
人間はどのようにして外国語を習得しているのか?どうやったらもっとも効果的に外国語を身につけることができるのか?
この問題を科学的に研究する分野を第二言語習得論(SLA)と呼びます。SLAの解説書は数多く出ていますが、たぶん一番わかりやすいのはこれ。廣森友人『英語学習のメカニズム』という本です。
インプット、アウトプット、モチベーションの維持、個性に応じた学習スタイルの使い分けなど、この分野の研究内容が網羅的に見渡せます。
文献案内も詳しく、ここからさらに深堀りしていきたいという読者にも応えてくれる良書。
青谷正妥『英語学習論 スピーキングから総合力へ』
京都大学の名物教授として知られる青谷正妥の名著。独自のアプローチとSLAの研究成果を混ぜ合わせたオリジナリティのある本です。
タイトルを見てわかる通りスピーキングを重視しますが、それ以外の分野も網羅的に語っています。聞くこと、読むこと、話すこと、そして書くこと。これらのベースにスピーキング訓練を置く構成です。その根拠についても最終章で専門的に掘り下げています。
文章が独特すぎて読みにくいですが、内容はおそろしく有益。どの章にも具体的な学習方法が解説されていて、「これは取り入れてみよう」と思えるものが必ずあると思います。
第二言語習得研究、心理学、脳科学といった分野の知見が動員された上級者向けの本ですね。
土屋雅稔『中上級者がぶつかる壁を破る英語学習最強プログラム』
次はこれ。タイトルにあるように伸び悩む中上級者をターゲットにした本なのおですが、内容の中心はボキャビル(語彙の習得)の重要性についてです。
かなり意外だと思いますが、伸び悩む中上級者は語彙不足が原因であることが少なくないんですよね。だから地道な英単語学習を続けると、パッと視界がひらけたりします。
これは僕の実体験でもあります。大学生のときいきなり多読から始めたのですが、なんか伸びてる感がない。その時この本を読んで試しにボキャビルを意識的にトレーニングしてみたら、急に視界が開けたことがありました。
ボキャビル以外の分野についても網羅的に記載されています。なんか伸び悩んでるなと感じる人におすすめの本。
斉藤淳『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』
中高生向けの英語塾JPREPで知られる斉藤淳の良書。子どもに対してどのような英語教育を行えばいいのかが、SLAなどの科学的知見とともに解説されます。
親御さんだけでなく、教師が読んでも役に立つであろう内容。
本書のコアメッセージは「音による学習をベースにせよ」というもの。具体的にはフォニックス(Phonics)による学習を推奨しています。
フォニックスはアルファベットに音声を対応させた学習ツールで、世界標準の英語学習法だそう。これを初期にマスターすることでその後の伸びが決定的に変わってくるといいます。
さらに英文法は高校レベルをふくめて中学校でマスターせよとか、中学のうちに洋書を一冊読破する体験をしておくべきとか、かなり刺激的な内容になっています。
斎藤兆史『英語達人列伝』
英語達人10人を選出し解説した中公新書のロングセラーです。面子は以下の通り。
・新渡戸稲造
・岡倉天心
・斎藤秀三郎
・鈴木大拙
・幣原喜重郎
・野口英世
・斎藤博
・岩崎民平
・西脇順三郎
・白洲次郎
学習のヒントになるだけでなく、やる気が湧いてくるのが最大の効用です。國弘正雄や青谷正妥のテキストもそうでしたが、やはりこの本もモチベーターとして優秀。
読み物としても非常に面白く、伝記としても楽しめますよ。
まとめ
以上、おすすめの英語学習本を紹介しました。
学習初期の段階でこのへんを読んで勉強方法について方向性をつかんでおくと、無駄な回り道をしなくてすむようになります。
英語学習が成功するかどうかは動機づけと才能に加えて学習方法によっても大きく左右されるので、的確な勉強方法を把握しておくことが超大事です。