『表現のための実践ロイヤル英文法』という文法テキストがあります。旺文社が出している『ロイヤル英文法』の姉妹編。
これがすごく評判がいいんですよね。プロの通訳者とか翻訳者とかも、このテキストをおすすめしている人が多いです。
ということで紙版を買って通読してみました。
目次を含めなければ約600ページ。
全部で24章あって、各章の最後には確認問題が掲載されています。この問題はけっこう歯ごたえがあって負荷が高い印象。
僕は1日10ページずつこつこつ進めて2ヶ月で読了。別冊の「英作文のための暗記用例文300」(後述)を使って瞬間英作文もしました。
本書の長所は、タイトルに「表現のための」とあるとおり、スピーキングやライティングにそのまま使っても違和感のない自然で実践的な英語表現が満載されているところ。
ネイティブのマーク・ピーターセンが著者のひとりなので安心して頼ることができます。
このマーク・ピーターセンという人は岩波新書の超ロング&ベストセラー『日本人の英語』の著者です。
日本人は英語のこういうところを勘違いしているよと指摘しまくる面白い新書。シリーズ化して4冊ぐらい出てます。
本書でもところどころにコラムが挿入され、『日本人の英語』と同じような解説がなされていきます(後述)。ここを読むのがいちばん面白い。
『表現のための実践ロイヤル英文法』はどんな人におすすめ?
さてこの『表現のための実践ロイヤル英文法』、どんな英語学習者におすすめできるのか?
僕が読んだ印象では、英文法に詳しくなりたいという野心をもつ人におすすめの、ちょっとレベルの高い参考書だと思います。
高校レベルの英文法をちゃんと身につけた人が、2冊目に読むといいでしょう。
逆にいうと英文法をそこまで掘り下げる気のない普通の学習者は無理して読まなくていいんじゃないかと思います。評判がいいからといって、英文法入門の1冊目にこれを読むのはNG。
1冊目はもっと簡単なやつに取り組むべきです。
僕がいつもおすすめするのは『総合英語エバーグリーン』(昔は『総合英語フォレスト』という名前だった)。
こっちのほうが例文や解説が簡単で読みやすいです。また確認のための問題の数も多く(そして適度に簡単)、アウトプットしつつ読みすすめるのにも最適。
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「英作文のための暗記用例文300」を使い倒す
『表現のための実践ロイヤル英文法』の最大のセールスポイントのひとつが、別冊の「英作文のための暗記用例文300」。
40ページ弱の薄い例文集なのですが、実践でそのまま使える短文が300個も収録されています。
これを完全に暗記しておけば、英作文やスピーキングをするときに使い回せる、「英借文」の素材になってくれるというわけです。
僕も本誌よりもこっちのほうに力を入れて取り組みました。僕の場合はゴリゴリ暗記していくのではなく、瞬間英作文のテキストとして使用。
左側の日本語を読んで、即座に英文に訳してスピーキング。次に右側の英語を確認し、10回ぐらい音読します。ここで暗記しようとは思わない。
1日1ページのペースでコツコツ進めて、約40日で終了。
2周目はよりスピーディに瞬間英作文していきます。1日2ページのペースで進めて、約20日で終了。
3週目はさらにスピードを上げ、1日4ページのペースで終了させます。ここまでくるとほとんどの英文をだいたい暗記できてます。
そしてこれを10周くらい繰り返すという流れ(今もやってる)。
英作文を教えているとある教師によると、こういう英作文テキストは30周ぐらいしなきゃものにならないとのこと。ということで最低でも10周はしましょう。
マーク・ピーターセンのコラムHelphul Hintを読んでみよう
上述したように、本書を読んでていちばん面白かったのはマーク・ピーターセンによるコラムを読むことでした。
『日本人の英語』(岩波新書)と同じようなノリで、日本人の知らない意外な事実が解説されていきます。
以下いくつかピックアップしてみましょう。
・It was difficult to talk about it.よりもI found it difficult to talk about it.のほうが英語らしい。
・There is構文はあるものの存在を初めて知らせるときに使うケースが多い。
・Was he alive?は純粋な疑問。中性的に問うているだけ。He was alive?は「えっ、生きているのですか?」という確認のニュアンスがある。
・「have O doing」が否定文で使われるとき、そこには批判的なニュアンスが強く出てくる。
・現在完了形と現在完了進行形にたいした違いはない。現在完了進行形のほうがいきいきとした臨場感がニュアンスとしてある。そのぐらいの違いでしかない。
・mustは堅い表現。have toのほうが日常生活では多く使われる。
・sholdはshallの過去形であり、厳密にいえばすべての用法が、条件のif節が省略された仮定法である。
・by動作主を省略した受動系は反感を買うことがある。優柔不断に言い逃れをしようとするニュアンスが発生するためだ。
・英語論文では受動態をなるべく使わないほうがよい。
・「be to 不定詞」はすべて「~することになっている」の意味がベースにある。さまざまな用法はそこから派生したものにすぎない。
・wantよりwould likeのほうが丁寧なのは、後者が「条件節の省略された仮定法」だから。
・however(しかし)は文章の先頭よりも文中に置いたほうが自然かつ効果的。
・Why is he angry?に比べると、What makes him angry?は意外性のニュアンスが強い。
以上、『表現のための実践ロイヤル英文法』の紹介でした。