一流翻訳者の間違いから学ぶ 中原道喜『誤訳の構造』【書評】

知る人ぞ知る名著『誤訳の構造』。

一流の翻訳者が犯した誤訳を取り上げ、そこから学ぶ本です。

ダメな翻訳を批判していくみたいな本ではないです。実力者でもこんな誤訳をするのかみたいな観点から翻訳を観察していき、誤った英語理解を防ぐための本。

英文はハイクオリティなものばかりなので、英文精読のテキストとしても大いに役に立ちます

著者の中原道喜は英語参考書の著者としても有名。受験生のとき『基礎英文問題精講』にお世話になった人も少なくないはず。

本書の構成ですが、文法項目ごとに章がわかれています。そしてそれぞれの文法ごとに典型的な誤訳を引いてくるという流れ。

扱われる文法項目は以下のとおり。

・名詞
・前置詞
・動詞
・助動詞
・冠詞
・形容詞
・副詞
・接続詞
・分詞
・動名詞
・不定詞
・代名詞
・関係代名詞
・仮定法
・比較
・否定
・挿入
・省略表現
・イディオム
・文型・構文
・その他(数詞、話法、受動態など)

 

例題は全部で188個。

これはムズいと思ったものをいくつか見てみましょう。

まずはalways assumingを使った83番の問題。assumingの訳し方に注意。

That’s the kind of rubbish errand boys read, always assuming they can read. (中原道喜『誤訳の構造』)

これを誤訳例では次のように訳しています。

そんな本は、いつだって自分は字が読めるんだってふりをするつまらん使い走りの小僧たちが読むものさ。(同書)

assumingを「ふりをする」と解釈しているようです。しかし著者によると、これは間違っているとのこと。

ここでのassumingはprovidingと同じで「~であるとして」という条件の意味を表す独立分詞構文になっています。

したがって正訳は「そんな本は使い走りの小僧たちが読むガラクタさ、もちろん小僧たちが本を読めるとしての話だがね」となります。

 

では次に96番の問題から。to be said forに要注意。

There is always something to be said for remaining ignorant of the worst. (同書)

これを誤訳例は次のように訳しています。

最悪の事態を知らないままでいるにはつねになにか別のことをしゃべっていなければならない。(同書)

forを「~のために」と解釈してます。しかしここでの前置詞forは「~に賛成」の意味を表しているというのが正解とのこと(againstの反対)。

したがってこの英文は「最悪の事態を知らないままでいることに賛成して述べられるべきことがある」という意味になり、「最悪の事態を知らないままでいることはつねに良いことなのだ」が正訳になります。

 

次は二重制限の関係代名詞と呼ばれるやつ。これは特にむずい。

There was apparently nothing that a man shouldn’t say to a woman that he didn’t say to Myra. (同書)

正解は「男が女に向かって言ってはならないことで、そのとき彼がマイラに向かって言わなかったことはなかった」となります。

that節が先行詞を二重に修飾している点がポイント。

訳し方のコツは英文の順番通りに、まず最初の関係詞節を訳し、次に二番目の関係詞節を訳すこと。

 

後は「省略表現」の章に出てくる否定の省略もめちゃくちゃ重要なんですが、これについてはまた個別に記事を作ろうと思います。

 

なお本書には続編もあります。タイトルは『誤訳の典型』。

大まかな構成は以下の通り。

1 誤訳の妙味
2 誤訳のタイプ
3 誤訳のレベル(5段階)
4 こんな誤訳もある
5 誤訳40選

『誤訳の構造』と同様に、英語精読や英文法確認のためのテキストとしても使えます。

若干マニアックな構成なので、どっちを読むか迷っている人はまず『誤訳の構造』から手にとったほうがいいとは思います。

1冊だけでは飽き足らないという人は『誤訳の典型』にも挑戦してみるとよいでしょう。

 

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