達人はいかに16ヶ国語を身につけたか『わたしの外国語学習法』【書評】

『わたしの外国語学習法』(ちくま学芸文庫)という、知る人ぞ知る名著をご存知でしょうか。

著者のロンブ・カトーはハンガリー人。16ヶ国語を身に着け、通訳や翻訳でも活躍した達人です。

この手の本が海外から入ってくることって意外とめずらしいですよね。しかも本書は文庫で読めるので、アクセスも容易です。ちなみに訳者の米原万里はロシア語の名人として有名な人。

久々に読み返してみてやはり良書だと感じたので、簡単に内容を紹介してみようと思います。

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語学の習得に才能は必要ない

朗読する少年

本書の第1章は自伝的な文章になっていて、彼女がどのような遍歴のもとで外国語を身につけていったのかが語られます。

英語、ロシア語、ルーマニア語、中国語、日本語、スロバキア語、ウクライナ語、ブルガリア語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語…。彼女が習得した外国語は16ヶ国語におよびます。

しかしロンブ・カトーいわく、語学の習得に才能は必要ないとのこと。

特別な才能など必要ありません。わたしの考えでは、芸術を除くあらゆる人間による活動の成果とか効力とかいうものは、関心の度合と、この関心の対象を実現するために費やされたエネルギーの量いかんにかかっているのです。(ロンブ・カトー『わたしの外国語学習法』)

 

これは彼女自身の体験が反映した意見なのだと思います。というのも、彼女は高等学校の時期には外国語が苦手で成績もパッとしなかったそうですから。

しかし知識欲だけはあったとのこと。この知識欲が必要性(困窮から抜け出すための外国語スキル習得)と結びつくことで、絶大な成果が生まれたと著者はいいます。

ここで強調しておきたいのですが、一九三三年の春、下宿(他の住まいはありませんでした)のボロボロのソファーの上で、あの時わたしが発揮したほどの忍耐と知識欲に燃えて書物に打ち込んだなら、誰とて同様の結果を得るに違いないということです。(同書)

 

学校の外国語授業でパッとしなかった人がここまでの達人になるのは、夢のある話ですよね。

 

仕事や遊びのなかに外国語学習を忍び込ませよ

ロンブ・カトーいわく、外国語を身につけるにはまとまった時間が必要とのこと。いくら学習を継続していても、それがある程度のまとまった量にならないと効果は出ないんですね。

ではその量とは具体的にどのくらいなのか。本書では週平均10~12時間としています。外国語を身につけたいのなら、どうにかしてこの分量を確保する必要があります。

余談になりますが、日本の学校英語でこの分量を確保できるかといったら微妙ですよね。月曜から土曜まで毎日英語の授業があったとしても、週平均6時間未満にしかなりません。

 

ではどうやって外国語学習者のための時間を捻出したらいいのでしょうか?著者によると、コツは仕事や遊びのなかに外国語学習を忍び込ませることにあるといいます。

外国語学習を仕事、あるいは娯楽・休息のなかに忍び込ませるのです。それも、そのいずれかを犠牲にして、というのではなく、それぞれを補うような形で。(同書)

 

机に向かって鬼勉強みたいなのを増やすのではなく、日常的な時間のなかに何気なく外国語を忍び込ませ、結果として大量の学習量を確保する。これは本当に大事なヒントだと思いますね。ぜひとも真似するべきですよ。

たとえばスマホのデフォルト言語を英語に変えてしまうとかがおすすめです。こうするとダラダラしたネットサーフィンがそのまま英語学習に化けます。

 

外国語学習の王道は多読

ロンブ・カトーがおすすめする最強の学習法、それは外国語で書かれた本の多読です。達人ってほんと多読を奨励してくること多いですよね。

なぜ本なのかというと、文法や語彙を学ぶのにこれほど適切なツールはないからだというんですね。生きた文脈のなかで文法や語彙を吸収することで、それが深く確実に定着していくとのこと。

個人的にここは半信半疑な部分がありますね。身につけた文法や語彙を確認しさらに深く定着させるには多読はいいと思いますが、知識がほとんどない状態で洋書の多読をして、スムーズに実力がついていくものなんでしょうか?

 

興味のある分野の本を読むのが大切だと著者は強調します。最初は大雑把にあらすじをつかめればオーケー。二周目から細かい部分の理解を目指します。

最初は辞書をいちいち引いたりしないのが大事だとも。完璧主義は捨てましょう。

また教材として、名作文学を学習用に改作したものをおすすめしています。これは日本でも入手できます。以下の記事を参照のこと。

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でも本を読むこと自体がハードル高くない?外国語の習得以前に読書で心が折れそうなんだけど…

確かに読書そのものが簡単ではないですよね。語学の達人ってよく「楽しく本を読むだけでいい!」とか言いがちなんですが、興味を持てる本を見つけたり、それを楽しく読み続けること自体がむずかしいですから。人によっては、英語をマスターするより、大量の読書を続けるほうが難しいと感じるかもですね。

ただ幸いなことに、現代では動画やオンライン英会話などの代替手段が充実しています。したがって、読書が苦手でもなんとかなります。

 

終盤の章では著者の学習ヒントがまとめられています。とくに重要だと思ったものを抜粋しておきますね。

・毎日学習すること(最低10分でも)。とくに朝がおすすめ。
・やる気がわかない日は無理をしない。その代わりに日常や遊びのなかに学習を忍び込ませて学習量を確保する。
・文脈から切り離された暗記はダメ。
・目や耳に飛び込んでくる情報を外国語に訳してみる。
・自分の間違った解答を何度も読んで暗記してしまわないように注意。
・間違えることを恐れない。

「自分の間違った解答を何度も読んで暗記してしまわないように注意すべき」というのは、何気に重要ポイントと思います。これは英会話スクールとかにも応用できるポイントで、たとえば学習仲間の間違った英語ばかり聞かされてマイナスの効果が発生しているとかよくあるんですよね。なるべく気をつけたいものです。

 

英語学習者必読の良書

以上、ロンブ・カトーの『わたしの外国語学習法』について簡単に紹介しました。

評判に違わず、英語のみならずあらゆる外国語の学習者におすすめできる良書になっていると思います。

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