英語のリスニングってどうやって勉強するのが正解なんだろう。とりあえず問題を解いたり、スキマ時間に手当たりしだいに聞いたりしてるけど…
リスニングは難しいですよね。実は外国語の4技能のうち、リスニングがもっとも難しいとよく言われます。だから苦労するのは当然です。
とはいえ、正しいアプローチでこつこつトレーニングを積めばリスニング力はかならず伸びていきます。
やはりリスニングにも第二言語習得研究で明らかにされた科学的に効果的なアプローチがあるんですよね。
この記事ではまずリスニング学習において押さえておくべきポイント3つ解説し、後半で具体的なリスニング勉強法を紹介します。
リスニング学習で気をつけるべきポイントは3つ
リスニングの学習は正しいアプローチで取り組まないと、努力の量に比例して力が伸びていきません。
気をつけるべきポイントは以下の3つです。
②一読して内容が理解できる易しいテキストを使う
③最初は狭く深く聞き、中上級に達したら広く浅く聞く
①まずは英語の正しい発音を身につける
英語の聞き取り能力を上昇させるためには、まず自分がその英語を正しく発音できるようになることが重要です。
かなり意外だと思いますが、実は発音と聴解には密接な関係があるんですね。「自分で発音できない言葉は聞き取れない」。これは研究で証明されています。
実際、外国語の達人の学習法則を追求した研究(竹内理『より良い外国語学習法を求めて』)でも、学習初期の段階で発音をトレーニングをする傾向が成功者にはあると指摘されています。
このステップにおけるおすすめの教材は『英語耳』。
これを学習初期の段階でマスターしておくと、その後の成長がブーストします。なぜ発音が大事なのか、発音を身につけておくとどんなメリットが期待できるのか。すごい説得力で解説してくれる良書なので、一読をおすすめします。
②易しいテキストを使用する
次に大事なのが、易しめのテキストを使うこと。スクリプト(音声を文字に起こした台本のこと)をざっと読んでみて、簡単に内容が理解できる文章をリスニングの教材にする必要があるんです。
理解できない文章や単語をいくら聞いても、リスニングの力は伸びないので注意してください。
では易しいテキストって具体的にはどのくらいの易しさなんでしょうか?
語彙研究の重鎮ポール・ネイションの研究を参考にすると、できれば98%、最低でも95%の単語が理解できる文章が理想です。
ざっとスクリプトを読んでみて、知らない単語が5%以下しかない。そのぐらいの教材を選ぶことがリスニング学習では超重要。
リスニングしている時の脳は複雑な活動をしているんですよね。ただ単語の音を聞いてるだけじゃなく、文脈を把握し、ちょっと前に聞いて保持しておいた記憶を現在の情報と結びつけたり、そこから先の話の流れを予測したり、予測が違ったらそれを修正したり。こういう高度な活動を瞬間的に行っているんです。
だから余計な部分にエネルギーを割いてしまうと、この活動がフルにできません。たとえば知らない単語だらけだったらそっちに気を取られてしまいます。
したがって98%前後の単語がわかる文章でトレーニングをし、聴解のためのスキルだけを鍛えることが、リスニング上達のための秘訣なんです。
③初心者のうちは正確さにこだわり、成長してきたら量にこだわる
上述した竹内理の研究によると、外国語学習の成功者は初期の段階では音を正確に聞き取ることにこだわるそうです。そして実力がついてきたら、今度は量をこなすために大量の英語を浅く広くリスニングしていく。
これを見習って、初心者のうちは量よりも正確さにこだわりましょう。教材を用意したら、それを徹底的に正確に聞きます(具体的なリスニング勉強法は後述)。
中上級者になったら今度は広く浅く聞くようにします。ここからはひたすら量を稼ぐことが目的。初心者のときに打ち立てたリスニングの基礎のうえに、ガンガン音声情報をインプットしていきます。
上記がリスニング学習において押さえておくべきポイント3つです。ここに気をつけておけば、努力したぶんだけ順調に実力が伸びていきますよ。
では次に具体的なリスニング勉強法について解説します。
リスニング学習の具体的な手順
それでは次に、リスニング学習のやり方について具体的に解説していきたいと思います。
易しい教材を選ぶ
まずは自分にあった教材を選ぶところからスタートします。これが超重要。
いきなりスクリプト(音声を文字に起こした台本)を読んでみてください。ほとんどの単語を知っていて、すらすら理解できるものを使います。具体的には知らない単語が5%以下のものです。
スクリプトを読んでみてすらすら理解できない教材は排除でオーケー。当たり前ですが、スクリプトのない教材はNGですよ。
全体→部分の順番で聞いていく
さて実際にリスニングを開始します。
最初は全体を通して聞きます。わからない部分があってもそこで立ち止まらず、まずは最後まで聞き取りましょう。これは1回でオーケー。
次に部分を聞いていきます。わからなかった部分を集中して聞きます。2~3回は繰り返してその部分だけを聞いてみましょう。
それでもわからなければ、ここで初めてスクリプトを見ます。正解を確認したら、聞き取れなかった部分にチェックマークをしておきます。
聞き取れないパターンには次の3つがあります。
②速さについていけなかった
③単語の連結による音の変化を聞き取れなかった
①は単語の発音を間違って理解していた場合は注意。その場で正しい発音を覚えましょう。ここで覚えてしまえば、これからはその単語を聞き取れるようになります。
単語そのものを知らなかったという場合は、重要そうな単語ならその場で暗記し、マニアックすぎる専門用語だったらスルーで大丈夫です。
②は問題ないです。トレーニングを積んでいけば速さにはついていけるようになりますので。
③は要注意です。
英語って単語と単語が連結して独自の音に変化するシーンが多いんですよね。たとえばI want toが「アイワナ」に聞こえたりa littleが「アリル」に聞こえたり。
これらも「そういうものなんだ」と思って丸暗記しましょう。単語の場合と同じく、一度覚えてしまえば、次からは聞き取れるようになります。
最後にまた全体を通して聞く
最後に仕上げをしていきます。
わからない部分を確認しおわり、文章の全体を聞き取れるようになったはず。そこで終わりにせず、聞き取れるようになった文章を何度も繰り返し聞きます。これも重要。
コツはスキマ時間を利用すること。
これ以前までのステップは静かな場所で集中して行うべきです。しかしこの仕上げのステップはすでに理解している英文を聞くことになるため、それほど集中力がいらないんですね。したがってどこでもできるんです。
通学時間や通勤時間で英語のリスニングをしている人は多いのではないでしょうか?
その際に聞くべき音声はこの段階の英文です。電車やバスのなかで仕上げ段階の英文を繰り返しリスニングしましょう。とても効率的な学習ができます。
どのぐらいの量を聞けば上達するの?
押さえるべきところをちゃんと押さえたら、あとは量が物を言います。第二言語習得研究が明らかにしているように、外国語の学習でもっとも重要なのはインプットの量ですからね。
では具体的にはどのぐらいを聞けばいいのでしょうか?
京都大学の名物教授・青谷正妥は名著『英語学習論 スピーキングと総合力』のなかで、年間100万語のリスニングを推奨しています。これを目指しましょう。
1分間に100語のゆっくりめなペースの音声は1日28分聞くと、1年で100万語ちょいになります。VOAのノーマルスピードがこの速度です。
速読速聴英単語シリーズだと1分間に150前後の単語数。これだと1日20分弱のリスニングで年間100万語に到達しますね。
ほとんどのリスニング音声がこの中間のスピードだと思います。
ですから最低でも1日20分前後はリスニング学習にあてたいところです。
コツは隙間時間を利用すること。机の前に座って集中して聞くのは5~10分くらい。残りの10~15分をスキマ時間に聞けば20分に到達します。
20分ぶっ通しでリスニングするのは苦行ですが、このように時間をわければ無理なく続けられます。
繰り返しますが、スキマ時間で聞く音声はすでに学習し終わった仕上げ段階の文章ですので、ここは注意してくださいね。
まとめ
以上、リスニングの勉強法について解説しました。最後にポイントをまとめておきますね。