「子どものうちから英語に慣れさせたい」
そんな思いで、小さいお子さんに英語の本を読ませたり、アルファベットを書かせたりしていませんか?
実はこれ、逆効果かもしれません。
最新の言語習得研究(SLA)によると、子どもの英語教育は「音」から始めるのが最も効果的で、文字や文法を先に教えると学習効率が下がることがわかっています。
では、具体的にはどのような英語教育を行えばよいのでしょうか?
本記事では、イェール大学元助教授・斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』をもとに、科学的に正しい子ども英語教育の方法をわかりやすく解説します。
「子どもに英語を学ばせたいけど、何から始めるべきかわからない…」
そんな方はぜひ参考にしてみてください。
①子ども英語は文字ではなく音から学習開始せよ
外国語学習を始めるとき、どこから取りかかればよいのでしょうか。
単語?文法?いきなり洋書を読んでいく?
正解は「音」から入ることです。外国語の習得には音の大量インプットが欠かせないことが、SLA(第二言語習得研究)でも明らかにされています。
子どもの英語学習にもこれが当てはまるんですね。というか、子どもにこそ当てはまります。10歳くらいまでの子どもはロジカルに物事を理解する能力がまだ低く、むしろ音でグングン知識を吸収していきますから。
『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』でおすすめされているのは「フォニックス」。
フォニックスとは、それぞれのアルファベット文字にひとつの音声を対応させたもの。英語圏の学校の発音学習でも広く利用されています。
なお個人的におすすめしたいテキストは『あいうえおフォニックス』。
これがものすごくわかりやすいです。大人が発音の学習するときにも最適のテキストといえるでしょう。
しかもYoutubeに動画もあります。
カタカナとローマ字は使っちゃ駄目
カタカナのルビは使っちゃダメです。
間違った発音が身につくからです。たとえばappleとアップルは違う音ですから、安易にカタカナルビに頼ると英語力の向上が妨害されてしまいます。
同じ理由から、ローマ字も使わない方がいいです。
ローマ字は外国人が日本語の発音を学ぶために用いる道具。英語とローマ字では、同じアルファベットでも発音が異なります。
したがって、ローマ字をモデルにしてしまうと、間違った英語の発音が身についてしまうんです。
発音記号は入門段階を終えてから使う
発音記号は初期段階では使いません。フォニックスに比べると量が多くて、子どもが学習するには負担が大きすぎるからです。

実際、ネイティブの子どもはフォニックスで発音を学びます。
発音記号は、すでに発音の入門段階をクリアした人が、知識を整理するために使うのが最適です。
小学生までの子供はフォニックスを優先し、中学生に上がってから発音記号をマスターさせるとよいでしょう。
②断片ではなくかたまりで英語を学ぶ
2つ目のポイントはかたまりで学ぶこと。つまり実際の状況に即した形で英語を吸収すべきということです。
たとえば英単語を覚えるときに文脈から切り離して個別に覚えるのではなくて、長文のなかで文脈とともに暗記するとかですね。
これまた大人の学習者にも当てはまる重要なアプローチです。
英文法ファーストの英語教育はNG
とくに注意が必要なのは英文法の扱い方。
子どもがいきなり英文法だけ独立させて学んでも、効果は薄いです。とくに10歳以下の子どもに文法第一の教え方をするのはNG。
英文法を教えるのは、中学に入ってからがベストでしょう。
『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』のメソッドでは、中学生になったら英文法の勉強を開始し、中学3年間で大学受験レベルまでの英文法を一気に取得するといいます。

でも英文法を知らずに英語を吸収しても消化不良になりそう…
このような疑問が浮かんだかと思います。
たしかに、われわれのように学校で文法重視の教育を受けてきた身からすると、英文法を飛ばしていきなり英語を学ぶのは、すごく不安で心もとないですよね。
じかし現代の第二言語習得研究では、これが常識となっています。
10歳までの子どもであれば、英文法を個別に学ばなくても、消化不良におちいる心配はありません。
子どもたちは、未知の意味を推測しながら、英語のかたまりを吸収していきます。そしてこれは、英文法のスキルを伸ばすうえでも長期的にはより効果的なのです。
③英語をではなく英語で学ぶ
語学学習でいちばん大事なのは継続すること。でも、どうやったらちゃんと継続できるのでしょうか?
自分が関心をもてる題材で勉強することがコツになります。
無味乾燥な英語の参考書ではすぐに飽きてしまいますが、自分の好きなジャンルを通じて英語を吸収すれば、ほぼ自動的に英語力が上昇していきます。
ここで「英語で」勉強する姿勢が重要になってきます。
自分が好きなジャンルの洋書や映画、動画などを総動員して、興味のある分野を「英語で」楽しんでいくわけです。
小学校の英語授業は「英語で」学ぶチャンス
小学校の英語授業は、「英語で」学ぶ方法を取り入れるチャンスといえます。
なぜなら、同じ教員がすべての教科を管理しているため、英語の授業と他の科目を結びつけやすいからです。つまり、英語の授業では、「英語で」他の授業の復習をおこなうことができるわけです。
すでに学んだことを、今度は英語で学びなおしていく。これによって英語力が伸びるだけでなく、複数科目の学力も高まり、複眼的な思考力が身につきます。
中学生以降の英語学習法
ここまで見てきたように、現代の第二言語習得研究では、音による学習を重視します。
10歳までは英語学習に日本語は不要。わざわざ日本語で解説すると、この年代の子どもにとっては逆にわかりにくくなるんですね。音を主軸に英語漬けにしたほうが効果が出るのです。
中学生になったら英文法を学習する
とはいえ、ずっとその調子で学習が続くわけではありません。中学生になったら英文法の勉強を始めます。中学生になれば、日本語による論理的な解説も理解できるようになるので。
『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』の特徴は、中学3年間で大学受験レベルの英文法を一気に身につけてしまうこと。英文法に6年間もだらだら時間を費やすのはもったいないという考え方。
ちなみに英文法は大学受験レベルで一生通用するので(シェイクスピア研究とかをするのでないかぎり)、この方法を実践すると中学3年間で一生通用する英文法が完成することになります。
音重視なのは変わらない:シャドーイングのすすめ
といってもやはり「音」による学習は依然として重要です。
たとえば中学から英語学習を開始する場合でも、やはりフォニックスによる発音トレーニングが最初にきて、他の学習はその土台の上で伸びていきます。
中学以降の学習段階でおすすめの最強トレーニングはシャドーイング。
シャドーイングとは、ネイティブスピーカーのモデル音声にあわせて自分もほぼ同時にその文章を発話していく練習法をいいます。通訳者の定番トレーニングで、大人がやっても絶大な効力があります。

リーディングも中学から始めよう
また文法と並行して、リーディングも中学生から取り組みはじめます。
ここでも著者ならではのアプローチが目立っていて、それは中学生のうちに洋書を1冊読み通す経験をさせるという点。
これによって、英語力が伸びるだけでなく、自分の能力に自信がつきます。そして、その後の英語力さらには学習一般の伸びが加速していくのです。
中学生が読む洋書としては、ラダーシリーズやレベルドリーダーズといった易しいテキストを使うのがよいでしょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください↓

年齢別の子ども英語学習ロードマップ
最後に、『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』で示されたロードマップを、ざっくりまとめてみましょう。おすすめ教材も紹介します。
3歳~4歳の子ども英語
・絵本の読み聞かせ
・ゲーム
エリック・カールの絵本が人気です。
PBSキッズのサイトで色々なゲームが遊べます。

4歳~5歳の子ども英語
・フォニックスに挑戦
海外の有名テキストもありますが、ここでは日本から発売されている『あいうえおフォニックス』をおすすめしておきます。
5歳~6歳の子ども英語
・文字を学習しよう
セサミストリートのYoutubeチャンネルがおすすめ。

6歳~8歳の子ども英語
・音と文字を結びつけよう
・リーディングの教材を取り入れる
幼児向けのリーディング教材が海外では揃っています。たとえば『I Can Read』シリーズ。
8歳~10歳の子ども英語
・英語でコンテンツを楽しむ
・CLIL方式を採用する(英語で他の教科を復習)
・英語日記を書いてみる
『Scholastic Success with Writing』は、海外で小学生向けに使われているライティング教材。
10歳~12歳の子ども英語
・文法学習をスタート
Grammaropolisは、アメリカの小学生が使う文法学習サイト。

12歳~15歳の子ども英語
・中学~高校レベルの英文法をマスターする
・シャドーイングを柱にする
・洋書を1冊読み通す経験をもたせる
英文法のおすすめ教材は以下の記事で紹介しています↓

15歳~18歳
・英語を学ぶのではなく英語で学ぶ
まとめ
子どもの英語教育では、年齢に応じた学び方のステップを意識することが重要です。
小さいうちは文字や文法よりも「音」を中心に、フォニックスを活用しながら英語の耳を育てるのが効果的です。そして、10歳を過ぎたら英文法やリーディングを本格的に始めると、スムーズに英語力を伸ばせます。
また、後から始めたとしても追いつくことは可能です。したがって、焦ったり諦めたりする必要はなし。
本記事で紹介したロードマップを参考に、お子さんにとって最適な英語学習法を取り入れてみてください。