子どもに英語を教えるのなら、どのような方法が最適なのか?科学的に正しい勉強法があるのでしょうか?
斉藤淳の『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』が参考になります。
著者はイェール大学の元助教授。SLA(第二言語習得論)の科学的知見に基づく子供用の英語学習法を開発、中高生向けの英語塾を立ち上げ成果を上げています。
単に英語ペラペラを目指すのではなく、英語学習によって総合的な知性を伸ばすというのが著者のアプローチ。
本書が根底に置く方法論は次の3つ。
2. 断片ではなくかたまりで学ぶ
3. 英語をではなく英語で学ぶ
これらの土台の上に、年齢ごとの具体的メソッドが提供されます。もう少しくわしく3つの方法論を確認してみましょう。
1. 文字ではなく音から学ぶ
外国語学習を始めようとなったとき、どこから取り掛かるか。単語?文法?いきなり洋書を読んでいく?
正解は音から入ることです。外国語の習得には音の大量インプットが欠かせないことが、SLA(第二言語習得研究)でも明らかにされています。
子どもの英語学習にもこれが当てはまるんですね。というか子どもにこそ当てはまります。10歳くらいまでの子どもはロジカルに物事を理解する能力がまだ低く、むしろ音でグングン知識を吸収していきますから。
本書でおすすめされているのはフォニックス。フォニックスはそれぞれのアルファベット文字にひとつの音声を対応させたもので、英語の発音学習で広く利用されています。
なお個人的におすすめしたいテキストは『あいうえおフォニックス』というやつ。
これがものすごくわかりやすい。大人が英語学習するときにも最適のテキストです。
しかもYoutubeに動画もあります。
『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語』に戻りますが、カタカナのルビは使っちゃダメとのこと。間違った発音が身につくからですね。たとえばappleとアップルは違う音ですから、安易にカタカナルビに頼ると英語力の向上が妨害されてしまいます。
同じ理由からローマ字も使わない方がいいとのこと。
発音記号は初期段階では使いません。すでに発音の入門段階をクリアした人が知識を整理するために使うのが最適(中学生以降)。
幼児には英語の本の読み聞かせも有効だそうです。
子どもが小学生になったら少しずつ文字の割合を増やしていきます。最終的に音と文字が6対4ぐらいになるまで文字による学習を増やします(とはいえ小学生の段階ではまだ音のほうを重視)。
2. 断片ではなくかたまりで学ぶ
2つ目のポイントはかたまりで学ぶこと。つまり実際の状況に即した形で英語を吸収すべきということです。
たとえば英単語を覚えるときに文脈から切り離して個別に覚えるのではなくて、長文のなかで文脈とともに暗記するとかですね。
これまた大人の学習者にも当てはまる重要なアプローチです。
著者がとくに注意しているのは英文法。子どもがいきなり英文法をそれだけ独立させて学んでも効果は薄いそうです。とくに10歳以下の子どもに文法第一の教え方をするのはぜったいにNG。
といっても文法が重要でないわけではないのでご注意を。
本書の著者のメソッドでは中学生になったら英文法の勉強を開始し、中学3年間で大学受験レベルまでの英文法を一気に取得するといいます。
3. 英語をではなく英語で学ぶ
語学学習でいちばん大事なのは継続すること。でも、どうやったらちゃんと継続できるのか?
自分が関心をもてる題材で勉強することがコツになります。無味乾燥な英語の参考書ではすぐに飽きてしまいますが、自分の好きなジャンルを通じて英語を吸収すれば、ほぼ自動的に英語力が上昇していきます。
ここで「英語で」勉強する姿勢が重要になってきます。
自分が好きなジャンルの洋書や映画、動画などを総動員して、興味のある分野を「英語で」楽しんでいくわけです。たとえばゲームを上手いこと英語と絡めるのは王道。本書では色々な無料動画サイトが紹介されています。
これも子どもにかぎらずすべての英語学習者が意識しておくべきポイントだと思われますね。
中学生になったら文字による学習を増やす
ここまで見てきたように、著者は徹底的に音による学習を重視します。
10歳までは英語学習に日本語は不要とのこと。わざわざ日本語で解説すると、この年代の子どもにとっては逆にわかりにくくなるんですね。音を主軸に英語漬けにしたほうが効くわけです。
とはいえずっとその調子で学習が続くわけではありません。中学生になったら英文法の勉強を始めます。中学生になれば日本語による論理的な解説も理解できるようになるので。
本書の特徴は、中学3年間で大学受験レベルの英文法を一気に身につけてしまうこと。英文法に6年間もだらだら時間を費やすのはもったいないという考え方のようです。
ちなみに英文法は大学受験レベルで一生通用するので(シェイクスピア研究とかするのでないかぎり)、この方法を実践すると中学3年間で一生通用する英文法が完成することになります。
といってもやはり「音」による学習は依然として重要です。
たとえば中学から英語学習を開始する場合でも、やはりフォニックスによる発音トレーニングが最初にきて、他の学習はその土台の上で伸びていきます。
中学以降の学習段階で著者がおすすめしている最強トレーニングはシャドーイング。
シャドーイングとは、ネイティブスピーカーのモデル音声にあわせて自分もほぼ同時にその文章を発話していく練習法をいいます。通訳者の定番トレーニングで、大人がやっても絶大な効力があります。
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また文法と並行してリーディングも中学生から取り組みはじめるとのこと。ここでも著者ならではのアプローチが目立っていて、それは中学生のうちに洋書を1冊読み通す経験をさせるという点。
これをすると英語力が伸びるうえに自信がついて、その後の英語力さらには学習一般の伸びが加速していくといいます。
ちなみに読むのはラダーシリーズとかレベルドリーダーズとかの易しい洋書にするのがよいでしょう。
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それにしても、僕が学生のころは、音による学習の重要性なんて周りのだれも言及してなかったですね。
このアプローチで学習を開始できる中学生はかなりめぐまれていると思います。