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哲学書で学ぶ英語 ラッセル『西洋哲学史』

バートランド・ラッセルは20世紀英国の哲学者。

数学者としても有名で、20世紀初頭の数学界・論理学界に巨大な影響を与えました。20世紀でもっとも頭のいい人間のひとりともいわれる男。

本書『西洋哲学史』は彼が一般向けに書いた本で、なんとノーベル文学賞を受賞しています。

ラッセルはその美文でも有名でした。一昔前は日本の英語の参考書や受験の長文問題に、ラッセルの文章がよく登場したらしい。

今回はこの『西洋哲学史』の第1章冒頭パートを読んでみます。

ラッセルの『西洋哲学史』を英語で読んでみる

第一章は「ギリシア文明の勃興」。まずは冒頭部分を引用してみます。

In all history, nothing is so surprising or so difficult to account for as the sudden rise of civilization in Greece. Much of what makes civilaization had already existed for thousands of years in Egypt and in Mesopotamia, and had spread thence to neighbouring countries. But certain elements had been lacking until the Greeks supplied them. What they achieved in art and literature is familiar to everybody, but they did in the purely intellectual realm is even more exceptional. They invented mathmatics and science and philosophy; they first wrote history as opposed to mere annals; they speclated freely about the nature of the world and the ends of life, without being bound in the fetters of any inherited orthodoxy. What occurred was so astonishing that, until very recent times, men were content to gape and talk mystically about the Greek genius. It is possible, however, to understand the development of Greece in scientific terms, and it is well worth while to do so.

 

では最初から1文ずつ見ていきましょう。

In all history, nothing is so surprising or so difficult to account for as the sudden rise of civilization in Greece.

「全歴史の中で、ギリシャにおける文明の急速な興隆ほど驚くべきもの、また説明が難しいものはありません。」

学校英語でもおなじみの「A is as~as B(AはBと同じくらい~だ)」の構文が登場。この文章のようにasがsoになることもあります。

主語がnothingなのがちょっと変則的。「以下の文章が否定されるんだな」と考えて読み進めます。ギリシア文明の突然の興隆ほどaccount for(説明する)のが難しいものはnothing(何もない)。

 

Much of what makes civilization had already existed for thousands of years in Egypt and in Mesopotamia, and had spread thence to neighbouring countries. But certain elements had been lacking until the Greeks supplied them.

「(いや確かに)文明を形成する要素の多くはすでに何千年も前からエジプトとメソポタミアに存在し、そこから周辺の国々に広がっていました。しかし特定の要素が、ギリシャ人によって提供されるまでは不足していました。」

主語はMuch of what makes civilaization(文明を形作るものの多く)。what makes~は~を作るもの。much of~は~の多く。

had already existedは過去完了形。現在から見た過去のギリシア、このギリシアを起点にしてさらに過去を見てる。その大過去から過去のギリシアに続くまでの歴史を語りたいので過去完了。

過去完了形を図解

過去完了形を図解

これがもし「メソポタミアの影響が現在まで及んでいる」とかだったら、メソポタミアから現在まで矢印が伸びて普通の現在完了系が使われます。

thenceは現代ではめったに見かけない単語ですが「そこから」の意味。

 

What they achieved in art and literature is familiar to everybody, but they did in the purely intellectual realm is even more exceptional.

「彼らが芸術と文学で達成したことは誰もが知っていますが、純粋に知的な領域で成し遂げたことはさらに例外的です。」

このtheyは直前に出てくるギリシア人のこと。これをメソポタミアやエジプトの人々と解すると話がつながらなくなるので要注意です。

they didのdidはこの文の前半に出ているachievedを言い換えたもの。英語では同じ単語を繰り返し使うことを避けようとします。英検とかの英作文でも同じで、たとえばここでachieveを2連発するような文を書くと試験官に悪い印象を与えます。

evenはmoreを強調しています。

 

They invented mathematics and science and philosophy; they first wrote history as opposed to mere annals; they speculated freely about the nature of the world and the ends of life, without being bound in the fetters of any inherited orthodoxy.

「ギリシア人は数学や科学、哲学を発明しました。また単なる年代記ではない歴史というものを始めて書きました。そして伝統に拘束されることなく、世界の本質や人生の目的を自由に考察したのです。」

;の記号は「これからその具体的な中身を説明するよ」という合図でよく使われます。

ends of lifeのendsは「終わり」ではなく「目的」の意味。inherited orthodoxyは直訳すると受け継がれた正統。

・as opposed to ~と対象的に、~と対立するものとして

・annal 年代記。ただ出来事を年代順に並べた記述。歴史(history)はこれに対して、出来事の原因や結果、意味の解釈までを含む活動です。ギリシアのヘロドトスが「歴史の父」と呼ばれています。

・speculate 推測する

・fetter 拘束

 

What occurred was so astonishing that, until very recent times, men were content to gape and talk mystically about the Greek genius.

「起こったことがあまりにも驚異的だったせいで、つい最近まで人々は、ギリシャ人の才能に対して驚き、不思議なこともあるものだと言うだけでよしとしているほどでした。」

・gape 口をぽかんと開ける

・be content to ~でよしとする。satisfiedが「満足する」なのに対して、contentは「まあこれでよしとするか」みたいなニュアンスがあります。

 

It is possible, however, to understand the development of Greece in scientific terms, and it is well worth while to do so.

「しかしながら、ギリシャの発展を科学的な用語で理解することは可能であり、価値のあることです。」

・worth while to~ ~する価値がある

 

最後に訳をまとめておきます。

「全歴史の中で、ギリシャにおける文明の急速な興隆ほど驚くべきもの、また説明が難しいものはありません。文明を形成する要素の多くはすでに何千年も前からエジプトとメソポタミアに存在し、そこから周辺の国々に広がっていました。しかし特定の要素が、ギリシャ人によって提供されるまでは不足していました。彼らが芸術と文学で達成したことは誰もが知っていますが、純粋に知的な領域で成し遂げたことはさらに例外的です。ギリシア人は数学や科学、哲学を発明しました。また単なる年代記ではない歴史というものを始めて書きました。そして伝統に拘束されることなく、世界の本質や人生の目的を自由に考察したのです。あまりにも驚異的だったせいで、つい最近まで人々は、ギリシャ人の才能に対して驚き、不思議なこともあるものだと言うだけでよしとしているほどでした。しかしながら、ギリシャの発展を科学的な用語で理解することは可能であり、価値のあることです。」

 

まとめ

以上、バートランド・ラッセル『西洋哲学史』の原書を読んでみました。

100年前の古典とはいえ、小説に比べればぜんぜん読みやすいので、多読の中級者におすすめの洋書です。1000ページくらいあるのでコスパも最高。

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