英語学習の王道といえば洋書の多読。語学達人は決まって多読をおすすめしてきますよね。
どういったものを読めばいいのでしょうか?
この記事では僕が読んだことのある約200冊のなかから、とくに面白くて読みやすい本を紹介します。
なお初心者はゴリゴリの洋書ではなく、まずは英語学習者向けに語彙や表現をやさしくアレンジしたものから始めるのがいいです。Leveled ReadersやGraded Readersといったシリーズですね。これを5~10冊ほど読めば普通の洋書に挑戦できる体力もつきます。
Leveled ReadersとGraded Readersについては、以下の記事を参考にしてみてください。
ふつうのペーパーバックを読める段階に達したかどうかってどうやったらわかるの?
それに関しては、Holesという名作を読むことで判断することができます。
これは『英語耳』の著者である松澤喜好が書いていたことの受け売りですが、この洋書を読破できるならペーパーバックの多読に進んでオーケーです。
逆にHolesがまだ厳しいという人は、もう少しLeveled ReadersとGraded Readersで修行を積むのがよいでしょう。
一般教養にはこれ Holy Bible(聖書)
まずはHoly Bible。聖書の英訳バージョンです。世界最大のベストセラー本です。これの現代英語訳を読んでいきます。古い英訳(キング・ジェームズ版など)だと難しいので要注意。
いきなり聖書というと面食らうかもしれませんが、文章の読みやすさという点では多読に最適な本です。分量もとんでもないですしね。コスパも最強。
西洋のベースにある教養を獲得しつつ、英語の勉強ができます。
退屈な文書も多いので通読はしなくていいです。というか通読はしちゃ駄目。
まずは創世記から読み始めて、出エジプト記、ヨブ記、福音書あたりを読んでいくのがおすすめ。後は自分が気になったところをつまみ読みすれば十分です。
リンク先バージョンのように旧約と新約がセットになった現代英語訳を読んでください。
ファンンタジーならこれ ナルニア国物語シリーズ
次はC.S.ルイスの代表作、ナルニア国物語をおすすめします。ファンタジー作品を代表する名作でもあります。
ハリポタほどのエンタメ性はありませんが、古典にしてはキャッチーで、けっこう楽しく読めると思います。相性が良ければドハマりするでしょう。
全部で7巻。1巻あたり200ページ前後なので、区切りをつけやすく挫折の危険性が少ないです。
文章が読みやすいのが最大のポイント。たぶん有名なファンタジー作品のなかでいちばん読みやすいと思います。ハリーポッターよりもぜんぜん楽。
逆にナルニアと同じかそれ以上に有名な指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)はめちゃくちゃ難しいので読んじゃ駄目です。興味がある人は和訳で読みましょう。アーシュラ・ル・グウィンの「ゲド戦記」も相当難しいのでおすすめはできません。
ファンタジーの有名所なら他にもジョナサン・ストラウドの「バーティミアス物語」もおすすめ。ドイツの作家ミヒャエル・エンデの英訳もグッドですね(『はてしない物語』や『モモ』)。
関連:英語でファンタジーを読むならこれ【おすすめ洋書11冊】
ナルニアの原書はアマゾンのAudibleにオーディオブック版があります。上手く使えばリスニングの訓練にもなり、インプット量が爆増するのでおすすめ。
効果的な使い方はまず原書をふつうに読書し、お気に入りの巻をオーディオブックでもう一度読む(聞く)という方法です。
自己啓発ならこれ How to Stop Worrying and Start Living(道は開ける)
洋書多読の王道の一つは自己啓発系の本を読むことです。
多読って自分が関心をもてるものを読まないと効果が低いし、そもそも続かないんですよね。なぜ自己啓発書が最適かというと、誰の人生や暮らしにも関係する内容が書かれているからです。興味関心をもちやすい。
ここでおすすめするのはデール・カーネギーの『道は開ける』。カーネギーは自己啓発御三家と呼ばれる3人のうちのひとりで、本書は彼の代表作です。日本版だけで200万部以上も売れている有名な本。
1948年に出たけっこう古い本ですが、文章はすごく読みやすいです。書きっぷりは明るくてフランク。ユーモアと高尚さを同時に漂わせる名著です。
偉人たちがどのように苦難に直面しそれを乗り越えていったか(あるいは打ち負かされていったか)が楽しく語られます。この手の本は何度も読み返すことになるのでコスパも最高。
なお自己啓発系の洋書については以下の記事も参考にしてみてください。
古典ならこれ A Little Princess(小公女)
古典は基本的にNGですが(文章が難しすぎるため)、子供向けの作品なら読みやすいものもあります。
その筆頭がフランシス・ホジソン・バーネットのA Little Princess(日本語タイトルは小公女)。昔の本にしてはとか子供向け小説にしてはとかじゃなく、普通にフックが強く、感動的です。読みやすいうえに面白い。
バーネットなら『秘密の花園』(The Secret Garden)も名作。『小公子』もかなり面白いですね。
同じようなノリでモンゴメリの「赤毛のアン」シリーズも読めるんじゃないかと思いがちですが(僕はそう思った)、あっちは意外と難しいのでおすすめはしにくいです。
児童小説で他におすすめするとしたら、フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』がいいと思います。
英語圏以外の作品ならこれ チェーホフの英訳
英語圏のネイティブが書いたものよりも、非英語圏の作品を英訳したもののほうが読みやすいとは有名な話。
とくにおすすめなのがロシアの文豪チェーホフの戯曲です。彼の作品は「中学生の語彙で書かれている」と言われるほど文章がシンプル。それを英語訳したわけですから、やはり格段に読みやすいです。
文章が簡単だと内容まで大したことないのかというとそんなことはなく、ロシアの作家ではトルストイやドストエフスキーの次に名前が挙がるレベルの凄い人です。
キャラクターがたくさん出てきて誰が誰だかわかりにくくなるのが唯一の難点か。登場人物一覧みたいなのが掲載されているバージョンで読んでください。
僕はロシア文学が好きなのですが、日本の小説が好きな人は同じようにして日本の小説の英訳バージョンを探してみるのがいいです。夏目漱石とか村上春樹とか意外と揃っていますよ。
ミステリならこれ And Then There Were None(そして誰もいなくなった)
ミステリの女王アガサ・クリスティ。この人の文章は非常に読みやすいです。内容の面白さは言うまでもなし。
代表作がたくさんある作家なのですが、とりあえずAnd Then There Were None(『そして誰もいなくなった』)を挙げておきます。これは本当に面白い。そして読みやすい。
本書にハマったらクリスティの他の名作も読んでみることをおすすめします。
クリスティもAudibleにオーディオブック版があります。
同じ推理小説でもコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズはやや難易度が高いです。それでもあの時代の作家にしてはずいぶん読みやすいので、推理小説が大好きという人は挑戦する価値ありますね。
ティーン向けならこれ オール・アメリカン・ガール
次はメグ・キャボットのAll American Girl。英米のティーン向けの小説。
キャボットといえばディズニーによって映画化もされた「プリンセスダイアリー」のほうが有名かもしれませんが、実はこっちのほうが面白いです。
主人公はアメリカの根暗女子高生。彼女の完全な一人称で物語は進みます。文章は心の声をそのまま書き出したかのような完全な口語体です。ここもポイント。
たまたま大統領の命を救ったことから超展開に巻き込まれるドタバタコメディ。非常に笑えます。主人公の成長物語でもあり、感動する部分もあります。
これもAudibleにオーディオブック版があります。
英語圏のティーン向け小説ではパラシオのWonder(ワンダー)も非常に面白いのでおすすめ。話に引き込まれてものすごい勢いで読めます。文章もわかりやすい。
現代のベストセラーならこれ ジュラシックパーク
スティーブン・スピルバーグによって映画化もされた大ヒット作『ジュラシックパーク』。原作はSF作家マイケル・クライトンによるものです。
クライトンの文章は本当に読みやすい。現役のベストセラー作家のなかでは最高に読みやすい文章を書く一人ではないでしょうか?
内容の面白さも格別で、本作は90年代最高のSF作品とも呼ばれています。ちなみに続編のLost World(『ロストワールド』)も同じくらい面白いです。
やはりAudibleにオーディオブック版があります。
現代の売れっ子作家といえばジョン・グリシャムやダニエル・スティールも読みやすいです。
逆にダン・ブラウンはやや難しめです。スティーブン・キングは超難しいのでおすすめできませんね。
歴史ならこれ Sapiens A Brief History Of Humankind(サピエンス全史)
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの世界的ベストセラー。われわれホモサピエンスの全歴史を語ります。
ホモサピエンスを他の人間(人間はホモサピエンス以外にもいた)から際立たせた認知革命、ホモサピエンスを定住の罠へと誘い込み苦難の始まりを告げた農業革命、ホモサピエンス自身の首を絞めつつある科学革命。この3つの革命を軸に話が展開します。
英文がとても読みやすいです。解説のわかりやすさも並大抵ではなく、けっこう高度な話をしていてもスラスラ読める感じ。ペーパーバックでの一読をおすすめします。
なお歴史系の洋書については以下の記事も参考にしてみてください。
ノンフィクションならこれ The Culture Map(異文化理解力)
次はノンフィクションから。エリン・メイヤーのThe Culture Map(『異文化理解力』)です。
世界各国の国民性を比較して、それぞれがどういう特徴をもっているのかあぶり出す名著。アメリカ人、日本人、フランス人、ロシア人、中国人、サウジアラビア人、イスラエル人などが、いろいろな目盛りで比較されます。
海外で仕事をする機会の多いビジネスマン向けに書かれた本ですが、単に読み物として読んでも非常に楽しめます。
この本もAudibleにオーディオブック版がありますね。
英語圏の読み物は実は小説よりもノンフィクションのほうが読みやすいんです。小説は単語や言い回しが無限に登場して手に負えないことが多いんですね。でもノンフィクションなら学校の英語長文のノリで読めます。
経済ならこれ Principles of Economics(マンキュー入門経済学)
アメリカの経済学者グレゴリー・マンキューが書いた、経済学の教科書です。このバージョンは、経済学を初めて勉強する学部生向けに書かれた入門書。
経済学とかいうといかにもつまらなそうなイメージありますよね。たしかに普通はそうです。が、マンキューの本は例外。読み物として面白く、知的興奮を味わうことができます。
文章のわかりやすさも格別。そしてアメリカの教科書は分量もすさまじいため(本書は約800ページ)、「わかりやすい文章を大量に読む」という洋書多読の目的に実はぴったりだったりするのです。
ちょっとでも経済や経済学に興味を覚えたことがあるなら、一読してみてほしい名著ですね。
なお経済系の洋書については以下の記事も参考にしてみてください。
・英語で経済を勉強したいならこれ【おすすめの洋書と参考書7冊】
メンタルヘルスならこれ Feeling Good(いやな気分よさようなら)
最後は精神医学の名著。デビッド・バーンズのFeeling Good(『いやな気分よさようなら』)です。
認知行動療法を広めた伝説的な良書です。認知の歪みを発見し、それを正していくための方法が満載。適切な認知を得ることで、精神状態の悪化スパイラルを防ぐことができます。
精神疾患を抱えている人でなくても読んで得るものは非常に多いです(精神疾患があるならなおのこと全力でおすすめできる)。仕事や日常のちょっとしたトラブルにも絶大な効果を発揮しますから。
後半は薬学の専門的な説明なので読まなくていいです。前半の実践的なパートだけでも400ページを超える分量があるのでコスパの心配はありません。
これまたAudibleにオーディオブック版があります。
さいごに
以上、おすすめの洋書を紹介しました。
なお多読といってもむやみやたらに何でもかんでも読めばいいわけではありません。どうすれば多読から効果を引き出せるようになるのか?
以下の記事で解説しましたので参考にしてみてください。
また多読のペースですが、基本的には年間50万語、できれば年間100万語を超えるペースで読むことをおすすめします。
以下の記事で具体的に解説していますので、参考にしてみてください。
わたくし最近はnoteのほうに英語学習の記事を書いてます。名作の英文読解とかニュース動画でボキャビル増強とかやってるんで、よければフォローお願いします↓