
英語の翻訳ってどうやって勉強すればいいんだろう。できれば翻訳学校には通いたくないんだけど…
ここではこのような問いにお答えしようと思います。
山岡洋一が『翻訳とは何か』で言っているように、正しい勉強法に従い適切なテキストを用いさえすれば、翻訳は独学でもプロレベルまで上達できます。
独学で翻訳トレーニングするのに最適の名著、トライアル対策のテキスト、勉強のときに意識しておきたいこと、おすすめの通信講座を紹介していくので、参考にしてみてください。
英文法と精読トレーニングで基礎力をガッチリ固める
まずは英文法の理解を完全なものにしておくことをおすすめします。
「そんなものとっくに攻略済みだ」と思う人が多いのはわかります。が、意外と穴があるものなんですよ。ここに穴があるとのちのち効いてきてしまいます。
といっても英語学者レベルのたいそうな知識は必要なく、基本的には高校生レベルの英文法を完全習得していれば十分です(高校レベルの英文法はやたら高度なので)。
というわけで英文法の理解がまだ完璧でない人は、まず文法をおさらいしていくといいでしょう。テキストも高校生用のわかりやすい定番書を使えば大丈夫です。
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難解な英文でも正確に読み解けるように、精読トレーニングをしておくこともおすすめです。
ふつうに英語学習するなら精読よりも多読を重視すべきなのですが、翻訳となると人並み以上の精読力も重要になってきます。
テキストはここでも受験生用の定番書が役に立ちます。このレベルを最初に固めておけば、あとは実践での翻訳がそのまま精読訓練にもなるので、精読の勉強をするのは初期だけで十分です。
関連:英語精読の正しいやり方とおすすめ参考書がこれ【半年で効果でます】
翻訳トレーニング本で翻訳脳を身につけよう
さて実際に翻訳の学習を開始します。翻訳術を指南するテキストはたくさん出ているので、それに頼っていきます。
色々なものに手を出すよりも、まずは内容に定評のある名著に的を絞って、それを何周もするのがいいです。
おすすめを何冊か紹介します。
安西徹雄『英文翻訳術』
まずはこれ。たぶん翻訳関係で一番有名な本です。
翻訳って英文和訳とは違うんですよね。原文の背後にある思考をイメージ化し、それを自然な日本語に直接降ろしてくるのが翻訳です。英文和訳なら原文をそのまま日本語に置き換えれば完了なんですが、翻訳で要求されるのはこのような高度な操作です。
本書には構文ジャンルごとに、その自然な翻訳のためのテクニックが満載されています。これを3周くらいすると翻訳脳の基礎が身につくことでしょう。
ここからさらに肉付けしていくなら、中原道喜『誤訳の構造』もおすすめ。
一流の翻訳者がおかしてしまったミスを点検しながら翻訳技術について解説してくれる名著です。
ハイレベルな英文法の確認にもなりますし、訳文の日本語が一流なので日本語力もパワーアップしていきます。
関連:一流の翻訳者でもミスはする 中原道喜『誤訳の構造』【書評】
さらに量をこなしたい場合は『英和翻訳表現辞典』が超おすすめ。
800ページ超えの読む辞典です。ただの英和辞典ではなく、それぞれの英単語をどのように訳したら質の高い翻訳になるかを延々と解説してくれる本。
まさに翻訳特化というのか、これに取り組んでいると英語力以上に日本語力が伸びていきます。
関連:通読するだけで翻訳脳力アップ『英和翻訳表現辞典』【書評】
近藤哲史『トライアル現場主義!売れる翻訳者へのショートカット』
翻訳の仕事を受注する場合、まず間違いなく最初にトライアルを課されます。
トライアルというのは翻訳者の実力を試すためのテストで、給料は実際の仕事の数分の一になることが多いです(無給のトライアルは受けないようにしてください)。
このトライアルをどう突破するかが最初の試練になってくるわけです。本書はその攻略法をトライアルを課す側の人間が解説してくれる本。アマチュアによる間違いだらけの解答例を、著者が添削していく構成になっています。
書いた人になりきれ、ミスに対する採点者の目を意識せよ、力の出しすぎには要注意などなど、5つの視点から解説。
このテキストに取り組んでおくと、仕事の受注率が大幅に上がり、学習の方向性もつかみやすくなります。
自分が専門とするジャンルの日本語力を伸ばそう
翻訳で重要なのは外国語よりも日本語の力だとよくいわれます。
読書などを通じて一般的な日本語力を磨いていくことも大切なのですが、それ以上に意識してもらいたいのが、自分の専門ジャンルの日本語力を伸ばすことです。そのジャンル専用の言葉遣いを身につけることと言ってもいいですね。
たとえば金融ジャンルを例にとってみましょう。riseという単語が出てきたとします。これは「上昇する」という意味で、英文和訳ならそれで十分ですよね。しかし金融翻訳の場合、これを「強含む」と訳さなくてはいけない場面があります。
こういう文体上の決まり事がジャンルごとにたくさんあるんですよね。それらを意識して身につけていくことが重要になってきます。

どうやったらそういう語彙力が身につくんだろ…?
王道なのは自分が訳すジャンルの本やニュース記事を多読することですね。洋書とその翻訳バージョンを用意して、比較対照させながら読んでいくのもおすすめです。
ジャンルによっては優れたテキストがあるので、それを使って基礎力を整えるのも有効です。たとえば経済や金融のジャンルでは鈴木立哉の『金融英語の基礎と応用』などが強力です。
通信教育ならアメリアがおすすめ
通信講座を探している人にはアメリアがおすすめです。
アメリアはフェローアカデミーが運営する翻訳者ネットワークとして有名。翻訳学校に比べると圧倒的に格安です。
ここに登録すると毎月色んなジャンル(金融、医療、特許、文学、ビジネスなど)の定例トライアルや、プロの技術だとか業界の裏話だとかを解説した翻訳情報雑誌が送られてきます。
非常に強力なペースメーカーになってくれるので初心者に最適。
また優秀な成績を残せばクラウン会員として登録され、アメリアを通して仕事を獲得することも容易になります。
自分の挑戦したいジャンルのトライアルは大切に保存して、なんども取り組んでみるのがおすすめ。英文と和訳の両方を音読して、完全に暗記してしまうのも手です。英語力と日本語力が同時にアップします。
公式サイトをチェック→ 翻訳者ネットワーク「アメリア」
アメリアについては以下の記事も参考にしてみてください。
・翻訳者を目指すなら翻訳学校よりもアメリアがおすすめな理由【経験談】

まとめ
以上、翻訳を勉強する方法について解説しました。最後にざっくりとまとめておきます。