英語学習でもっとも大切なのは何でしょうか?
答えはインプットの量です。
これは第二言語習得研究が明らかにした事実で、外国語学習者の能力の伸びは大量のインプットが一番のベースになっています。
逆にアウトプットはインプットを補助する機能しかないんですね。
たとえば白井恭弘は『外国語学習の科学』(岩波新書)で、「多くの実験研究が行われているにもかかわらず、アウトプットそのものが言語能力の向上につながった、という結果はあまり出ていない」と注意したうえで、英語教育者・松本亨のListen more, speak less. Read more, write less.ということばを引用しています。
英語を学習するのなら、大量のインプットを意識するのが正解なんですね(アウトプットも補助として欠かせないものではあります)。
英語学習のインプットとは、要するに読むことと聞くことですよね。いわゆる多読と多聴です。
でもそれって具体的にどのくらいの量なんだろう…?
たしかに具体的な量がわかってないと、努力を継続させるのが難しいですよね。最初だけはやみくもに頑張れても、長期的に続けるのはきついと思います。
多読と多聴は具体的にどのくらいの量をこなせばいいのか?
以下、それを解説していきます。
年間100万語を目標にしよう
英語の学習に多読と多聴、つまり大量のインピットが必要なのはわかった。ではそれは具体的にどのくらいの量なのか?
これについては西澤一らの研究(2010)が知られていて、高専の学生に4年間の多読をしてもらったところ、10万語で訳さず英語を読むことに慣れ、30万~100万語でTOEICスコアが大幅に上がり、300万語で海外に1年留学した人と同じ効果が出たといいます。
ここから西澤らは、少なくとも累計で100万語が必要と結論しています。
さらに参考になるのはこれを受けて青山正妥が『英語学習論 スピーキングと総合力』で行った提言。
青山は英語の習得に多読(Extensive Reading)と多聴(Extensive Listening)が絶対に必要だと確認したあとで、次のようにいいます。
Extensive Readingにせよ、Extensive Listeningにせよ、累計が100万語に到達するだけでは絶対に不十分です。そうではなくて、毎年100万語が僕がお勧めする学習量です。(青山正妥『英語学習論 スピーキングと総合力』)
多読が年間100万語。多聴も年間100万語。多読と多聴を合わせて年間200万語。僕はこれを意識していますし、みなさんにもおすすめします。
僕はこれを意識するようになってからリスニング力が伸びました(多読はもともと得意だった)。すさまじく効果があります。
ちなみに青山正妥は京都大学の名物教授として知られ、理学博士にして英語の達人というおもしろい人です。TOEICだけでなくTOEFLでも満点を所持している模様。上述の『英語学習論』は名著なので興味のある人は読んでみてください。
年間100万語とか聞くとそれだけで無理ゲー感が出るかもしれません。
しかしその分量を具体的に考えてみると、意外とたいしたことないのです。次にそれを確認しましょう。
年間100万語ってどれくらい?
英語学習では1年間に100万語の多読と多聴がおすすめなのでした。年間あたり100万語を読み、同時に100万語を聞く。
しかし1年間に100万語と言われてもピンとこないですよね。それって具体的にどれくらいの量なのでしょうか?
年間100万語のリーディング
まず年間100万語のリーディングがどのくらいの量なのか、もう少し具体的に見てみましょう。
年間100万語ということは1ヶ月で約90000語ですから、10日で30000語、1日3000語ぐらいを読めばいいことになりますよね。
参考書や洋書は1ページあたりだいたい300語から400語が収録されています。ということはだいたい7~10ページ読めば1日で3000語になり、それを1年間続けると年間で100万語に到達します。
1日あたり7ページから10ページ。意外と少ない気がしませんか?
7~10ページなら30分もあれば読めます(多読は易しめの英文を読むのが原則ですから、30分以上かかるようなら英文が難しすぎる)。
10ページをぶっ通しで読むのがきつい場合は、これをさらに分割しましょう。たとえば午前中に5ページ、午後に5ページというふうに。こうすると疲れません。なんなら10回のスキマ時間に1ページずつ読んでもいいです。
複数の本や教材を並行して読むのもおすすめです。こうすると飽きにくくなりますからね。
なお多読におすすめな洋書は以下の記事を参考にしてください。
年間100万語のリスニング
次は年間100万語のリスニングを考えてみましょう。年間100万語のリスニング、具体的にはどのくらいのペースなのでしょうか?
上述の青山正妥の著書によると、1分間に100語のゆっくりめなペースで1日28分聞くと、1年で100万語ちょいになるといいます。
じゃあ1分間に100語のゆっくりめなペースってどれくらいなのか?これはVOA(Voice of America)のノーマルスピードに相当します。
VOAのサイトに行くかアプリをダウンロードするかして、ノーマルスピードで記事を聞いてみてください。思った以上にゆっくりで驚くと思います。これを1日あたり28分聞けば1年で100万語。
市販のリスニングCDはVOAと比べるとだいぶ速いです。たとえばZ会の速読速聴英単語シリーズだと、WPM(1分あたりの語彙数)は150前後ですね。これだと1日20分弱のリスニングで年間100万語に到達します。
これを目安にするのがいいと思います。1日あたり20分前後ですね。これも意外とたいしたことないような気がしませんか?
20分のリスニングが多すぎると感じても大丈夫。
時間を分割するのがコツです。スキマ時間を利用してトータルのインピットを増やすよう心がけてみてください。
机の前でガッツリ集中してリスニングするのは5分、残りの15分はスキマ時間で学習。これぐらいのバランス感覚でちょうどいいくらいです。
スマホなどをフルに活用してスキマ時間でのリスニングを増やし、トータルのインプット量を稼ぐのです。
ちなみにスマホでリスニングするならスタディサプリというアプリが強力です。
オーディオブックを活用してリーディングとリスニングを一体化させるのもおすすめです。
音声を聞きながら洋書を読む、あるいはすでに読んだ洋書の音声を聞いていくのが効果的な利用法。
Amazonのオーディブルなら1冊目が無料で入手できます。まだ使ったことのない人は上手く活用してみてください。
まとめ
以上、多読と多聴が具体的にどのくらいの量を指すのか解説しました。最後に内容をまとめておきます。