中学高校で6年間も英語の勉強をしたのに、どうしてまったく英語が使えないんだろう?教え方が下手なせい?それとも才能がないのかな?
日本人は学校でずっと英語の勉強をしているのに、ぜんぜん英語が使えるようにならない。これはおかしい。よくこう言われますよね。
なぜ学校で英語を習うにも関わらず、ぜんぜん使い物にならないレベルなんでしょうか?
実は量が足りてないんです。
学校の授業だけでは絶対的なインプット量が足りないんですよね。したがって、なんとか工夫してインプットの量をかせぐ必要があります。
以下もう少しくわしく解説するとともに、インプット不足解消のためのコツを解説したいと思います。
日本人は英語のインプットが不足してる
日本人が中学高校それから大学で英語を学習する時間を合計すると、だいたい1,120時間になると言われています(以下、学習時間の記述は廣森友人『英語学習のメカニズム』を参照しています)。
個人差はあるものの、だいたいそのぐらい。
ここで考える必要があるのが、外国語をマスターするのにどれくらいの時間が必要かということ。この1120時間で足りるのでしょうか?
参考になる数字を見てみましょう。英語圏の人間が日本語を習得するのに必要とされる時間は、2,200時間です。
そしてこれはそのまま日本人が英語を習得するのに必要な時間でもあります。
英語を習得するのに最低でも2200時間の学習が必要なのに、実際には中学高校大学で1120時間しか英語の学習時間がない。必要な時間の半分くらいなんですね。
中学と高校で6年間とか、大学もふくめて10年間とか聞くと、どえらい時間のように思えてきますが、実際にはその時間の量がぜんぜん足りていないというのが実情なんです。
ちなみに英語の達人になるには1万時間が必要とされます(この1万時間というのはマジックナンバーで、語学に限らずどんな分野でも達人と一般人をわけるのが1万時間の努力量といわれます)。
またネイティブの子どもは5歳になるまでおよそ17,520時間の大量インプットを行っています。子どもは急に言葉を話し始めますが、猛烈なインプット学習でそれが可能になるんですね。
子どもや達人には及ばずとも、われわれ普通の英語学習者もなるべく大量の学習時間を稼ぐことを意識する必要があります。
インプット不足を解消するために心がけるべきこと
じゃあ大量のインプットをしようということなんですが、がむしゃらに頑張るだけじゃ効率が悪そうですよね。
どうやったら効果的なインプットになるのでしょうか?大量インプットのさいに心がけておくべきことは何か?
ここでは村野井仁の『第二言語習得から見た効果的な英語学習法・指導法』という本をヒントにして考えてみましょう。
村野井はインプットするさいに必要な要素として次の4つを挙げています。
・関連性
・真正性
・音声と文字のインプット
それぞれ順番に見ていきましょう。
理解可能性―やさしめの英語をインプットせよ
まずは理解可能性。これは理解できる情報をインプットしなきゃ意味がないということ。
たとえばまったく意味のわからない外国語をテレビとかラジオでずっと聞いていても、急にわかるようになったりはしないんですね。
難しすぎる本のページをひたすらめくっているだけでも駄目です。
重要なのは、自分にとってやや簡単な英語を大量にインプットすること。リーディングのときもリスニングのときも、これを心がけましょう。
とくにリスニングではこれが忘れられがちなので覚えておきたいところ。すでに理解している文章をリスニングしてもあんまり意味がなさそうに思えるんですが、実はこれこそが大事だったりします。
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関連性―興味のもてるものをインプットせよ
2つ目は関連性。これは自分が興味をもてる対象をインプットしようということです。
バーダマン(2013)の研究によると、興味を持てる文章を読んだときは、そうでないときと比べて、情報の定着率が1.15倍になるといいます。
1.15倍と聞くとしょぼく思えるかもしれませんが、時間がたつほどに効果が積み重なり、長期的には相当な差になって表れてきますよこれは。
ですから興味のもてる分野を活用して英語をインプットすることが大事なんですね。
自分の趣味を活用するといいです。好きな映画とか、好きな小説とか、好きな洋楽とか、好きな海外ゲームとか。すでにハマっているものを英語学習に転用できないかと考えるのがコツです。
逆に興味のもてないものを使っちゃ駄目です。たとえば英字新聞とかは多くの人がひっかかるトラップですよね(新聞が好きなら読んでもオーケー)。
真正性―なるべく生の素材を使うべし
3つ目は真正性。これはインプットする情報が現実の生の素材であるかどうかです。
たとえば英検とかTOEICの問題週や参考書。ああいうテキストに収められている英語は生の素材からは遠いんです。
いわゆる「きれいな英語」なんですね。日常世界ではありえないような完璧な発音で英語が話されていたりとか。構文が整いすぎていたりとか。公式の英語なんです。
生の素材とは現実に存在しているそのままの英語のこと。なるべくこれをインプットしたほうがいいんですね。
現代ではインターネットのおかげで生の英語にふれることは簡単です。Youtubeで検索すればいくらでも生の素材が手に入りますよ。自分の興味のある分野(関連性!)で検索してみましょう。
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ただしこの点は4つのポイントのなかでは優先度が低いです。まずは他の3つのポイントに気を配ってください。
音声と文字のインプット―リスニングも忘れずに
最後は音声と文字のインプット。リーディングとリスニングのバランスが大事という話。
インプットというと、どうしても多読が思い浮かびます。多読はめちゃくちゃ効果的な英語学習法なのでそれはいいんですが、リスニングが忘れられがちなんですよね。
文字だけでなく、音声のインプットにも効果はあります。ですからリスニングも忘れないようにしましょう。
やさしめの英語(理解可能性!)を大量にリスニングすれば、強力なインプット学習になりますよ。
本を読むのが苦手な人は、リスニングの比重を増やしてみるのもいいでしょう。
以上の4点を意識しながらインプット量を増やしていきましょう。
がんばらずにインプットの量を増やすコツ
なるほどねー。でも、そんなにたくさん勉強する気にはなれないなあ。学校の勉強だけでもきつかったのに。
たしかにゴリゴリの英語学習を増やすのはよっぽど根気のある人じゃないと無理ですね。それはそれで別の才能ですから。
インプットを増やすコツは、日常のなにげない活動に英語を忍び込ませることです。これは16ヶ国語を操る達人ロンブ・カトーが『わたしの外国語学習法』でおすすめしているワザでもあります。
一生懸命に勉強する時間を増やすのではなく、普段当たり前のようにやってる活動に英語を忍び込ませるんです。
具体的にはどうすればいいの?
たとえば暇な時間のネットサーフィンを英語でやるとか。英語で検索して、英語で情報を見るわけですね。
あるいは動画サイトで英語の動画を見るとか。英語圏の人のゲーム実況を見るとかがオススメですね。英語の字幕をつけて見ればリスニングとリーディングが同時に伸びます。
僕はよくYoutubeでこれをやってます。コメント欄を読むのもリーディング訓練になります。
あるいは日記をつけているなら最初の3行だけを英語で書いてみるとか。書くのが面倒くさいなら3行しゃべるだけでもいいですよ。
友だちと英語オンリーの会話時間を作ってみるのもいいですね。毎日5分間だけ英語で会話するだけでも相当な効果がありますよ。
このように、日常のなかに英語を忍び込ませる工夫をするのが重要です。「うおおおお勉強するぞい!」みたいなノリだけだと疲れてしまうので、いかに楽をしてインプットを増やすかを考えるんです。
楽することと成果を出すことの両立を全力で追い求めるイメージです。ちょっとの工夫でも、何年もすればとんでもない量のインプットにつながりますよ。
1日30分でも、1年なら180時間にもなりますからね。3年続ければ540時間ものインプットが稼げます。何もしなかった場合とでは怖ろしいほどの差が出ますよ。
まとめ
以上、英語学習にはインプット量が大事だということ、そしてインプット量をかせぐためのコツについてお話しました。
最後にざっくりとまとめておきます。